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​内側から外側へ ― Yoga for the Special Child
ソニア・スマー(シバカミ)インタビュー

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ヨガが体と心のあらゆるシステムに深いレベルで、なかでも自分自身の内側から外側へと作用することは、科学によって立証されています。これは、ヨガがスペシャルニーズを持つ子どもたちに非常に有効であることが証明されている一つの理由です。ソニア・スマー/シバカミ(Sonia Sumar/Sivakami)は、1972年に娘のハバータ(Roberta)がダウン症を持って生まれてきたことから、スペシャルニーズを持つ子どもたちへのヨガの指導を始めました。ソニアは、ハバータにヨガを教えるなかで、彼女に多くのよい変化が見られることに気づきました。そこで、彼女は、1975年にヨガ講師の資格を取り、スペシャルニーズを持つ子どもたちの生活によい変化を起こしたいと考えている保護者やセラピスト、そのほかのヨガの先生たちに彼女のメソッドを教えるためのプログラムである、Yoga for the Special Childの開発に取りかかりました。今回のインタビューでは、シバカミが、心温まるエピソードや、Yoga for the Special Childがなぜユニークなものであるかについて、語ってくれました。

 

Yoga for the Special Childは、どのようにしてできたのですか?ヨガは、あなたの娘のハバータにどのような効果がありましたか?

-- Yoga for the Special Childは、私が娘の成長に役立てようと思って考えた、ヨガによる早期介入の草分け的なプログラムです。ハバータは46年前に生まれたのですが、当時、スペシャルニーズを持つ子どもの生活には、非常に限られた機会しか保証されていませんでした。ほとんどの子どもは、7歳になるまで治療的なプログラムを受けることができませんでした。そして、彼らは7歳になると、スペシャルニーズの子どもたちのための学校に通うことになるのですが、多くの人が彼らは何も学ぶことができないと考えていたため、そこでも時に大きな困難に直面しました。

 

ですから、ハバータの主治医が私に、スペシャルニーズの子どもが通う学校に行くには7年間待たなければならないと告げたとき、私にはそれが永遠であるかのような長さに感じられました。私は、私の子どものためにすぐに始められるものを探していました!その頃、私は、インドラ・デビ(Indra Devi)が書いた本を読んで、すでに自分でヨガの練習を始めていました。そのときには、インドラ・デビが後に私の師となるサッチダーナンダ師(Swami Satchidananda)のよい友達であることなど知る由もありませんでした。私は、娘が自身の内側からよい変化を起こすような何か、そして、この世界で彼女が直面するであろう困難に立ち向かう準備ができる何かを、彼女に教えたかったのです。そして、ヨガがいいのではないか、と思いつきました。私は、自分自身に、「やってみたらいいよね。何も失うものはないんだし。やってみる価値はある」と語りかけました。ですが、私は何をしたらよいのか、何から始めたらよいのか、まったく分からない状態でした。想像してみてください。インターネットもなかったし、相談する場所もなかったんです。自分でやるしかありませんでした。私の夫はアルコール依存症でしたので、私は上の娘のハナタ(Renata)とハバータを育てなければなりませんでした。私たちは、ヨガがハバータにとって有効なものになるとの強い信念を持って、ヨガの冒険の道を歩み始めました。

 

ハバータは、呼吸器系の問題を多く抱えており、私は、彼女の呼吸が楽になる方法も探していました。そのこともまた、ヨガをやっていこうという後押しになりました。私は、初めに伝統的な練習法に基づいた呼吸を教える方法を見つけようとしたのですが、そのうちに彼女の呼吸について心配する必要がないことに気づきました。私が彼女と一緒に様々な体の動きを行うことによって、彼女は自然に正しい呼吸ができるようになっていたのです。私がすべきことは、彼女が痛みを感じることなくどれだけ長くポーズを保持できるかに気を配ることだけでした。彼女に注意を傾けることにより、私は彼女がどのように呼吸をしているのかを、より深く知ることができました。彼女は、初めはあまり協力的ではなかったのですが、私は、彼女と毎日少なくとも30分間ヨガを行い、その結果、私は、彼女が今していることにより集中できるようになり、自身の体への意識が高まっていることに気づきました。

 

私は、彼女を毎月医師の診察に連れて行っていました。それは、7歳になるまで何もできることはないと私に告げたのと同じ医師だったのですが、彼はとても驚いていました。彼は、「あなたが娘さんに何をしているのか知らないけど、彼女はよくなっているね」と言いました。私は、その医師に、彼女にヨガを教えていることを伝えましたが、私がどのようなことをしているのかを彼が尋ねることはありませんでした。彼はただ、「彼女はすごくよくなっているから、それをやり続けなさい」とだけ言いました。

 

ハバータは、出生時、ダウン症の診断のほかに、出産時に低酸素状態となったことから脳に損傷があるかもしれないと言われていました。実際、ハバータは、生後3日半にわたって保育器に入り、酸素吸入を行わなければなりませんでした。しかしながら、私がしばらくの間ハバータへの働きかけを行った後、彼女が9カ月か10カ月の頃でしたが、主治医からは、彼女がとても順調に成長していたので、おそらく彼女はダウン症だけを持っていて、脳の損傷はないだろうと告げられました。現在では、神経可塑性というものが立証されています。彼女にはいくらかの脳の損傷があったのかもしれませんが、私が毎日ヨガで彼女の脳の様々な部位に刺激を与えていたので、彼女の脳の症状が治った可能性があるというふうに人に言われたこともあります。

 

ハバータが成長し改善を続けるにつれ、私は彼女にいくつかのアーサナ(ヨガのポーズ)を教え始めました。彼女は大きな改善を見せました。彼女の筋緊張は改善され、肺の症状は完全によくなり、呼吸器系の問題もなくなりました。

 

Yoga for the Special Childのメソッドは、とてもユニークなものです。私たちは、おもちゃや道具を使いません。ヨガだけを行います。先生と子どもの間のやりとりだけなので、生徒とのしっかりとした関係性を築かなければなりません。Yoga for the Special Childとは、創造性とつながりであり、あなたが教えている子どもと関係性を築くということなのです。さらに、アーサナは、体の内側から外側へ働きかけるすばらしい方法であり、体を癒す効果が高いものです。

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どのような症状を持つ子どもとヨガをしているのですか?

-- 初めは私の娘とだけ行っていました。正直に言うと、私の人生が今のようなものになるとはまったく思っていませんでした。私は、自分が本を書くことになるなんてまったく思っていなかったし、ヨガのクラスを教えることになるとも思っていませんでした。ただ娘を助けたいと思ったことから、すべてが始まったのです。ヨガでハバータが変わっていくのに周りの人が気づきだすにつれて、ほかの子どもにも教えてほしいとの誘いを受けるようになりました。ハバータは、7歳になる頃には、ほかのセラピーが必要なくなっていました。ヨガですべてが間に合ったのです。彼女の筋緊張は非常に良好でしたし、集中力も優れていました。ダウン症を持つ7歳の子どもとして、驚異的というほかがないほどでした。私はこのようにして、誘いを受けたときには、ほかの場所にもヨガを教えに行くようになりました。私は、スペシャルニーズの子どもたちのための学校で教えてくれないかという依頼を喜んで受けたのですが、そのときに私は、先生と母親の二役をやらないですむのだから楽なものだと思ったものです。先生と母親の二役を演じるというのは、私にとってしばしば困難を伴うものだったのです。

これが、私が様々な年代および能力の子どもたちとヨガをするようになったきっかけです。私は、自閉症、ADHD、ADD、脳性麻痺、そのほかの多くの症状を持つ子どもたちとヨガをしました。彼らと一緒にヨガをすることは、私の想像力が試されましたし、彼ら一人ひとりがいかにユニークな存在であるかに気づかせてくれました。

 

現在、私は、あらゆる症状を持つ子どもとヨガをしています。世界中を旅して教えていると、今までに出会ったことのない症状を持つ子どもに会うこともありますので、常に自分のメソッドを調整する必要があります。そのため、Yoga for the Special Childは、一人ひとりのすばらしい個人の役に立つためにはどうすればよいかを見出すために、永遠に学び続けるメソッドなのです。私は、一緒にヨガに取り組んでいる人が持つ症状について、常に学んでいます。このメソッドは、あらゆる年代と能力の人のためのメソッドなのです。

 

Yoga for the Special Childは、世界中で高い評価を受けています。それは私だけの功績ではなく、私たちのプログラムに参加し、誠実さと愛を持ってともに教えを広めてくれている人たちのおかげです。彼らは、いつも私に、ヨガの生徒たちがYoga for the Special Childのテクニックにいかに驚くべき反応を示しているかを報告してくれます。このプログラムを教えている先生のほとんどが、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、医師、スペシャルニーズの子どもを持つ親です。彼らは、このメソッドが効果的なものであると感じています。ほかの療法でつきものとなっている、一定の目標に到達しなければならないというプレッシャーがないのも特徴です。もちろん、私たちのプログラムに参加している先生の中には、優れたヨガの先生もいます!

 

子どもたちとのクラスに、インテグラル・ヨガ[1]のすべての側面を取り入れているのですか?

-- そのとおりです。インテグラル・ヨガのクラスのすべての要素が取り入れられています。もちろん、一人ひとりの状況によってアーサナの調整を行います。身体的な症状が重い人と行う場合は、非常に複雑な取り組みとなります。私は、すべての人と快適にヨガができるように、常に調整し、橋渡しを行っています。ですから、インスピレーションを働かせて、優れた仕事をするために、本当に好きでこれをやっているということが非常に重要なんです。娘のハバータは、私の本当のインスピレーションでした。今でもそうです。ですが、彼女の体がこの世を去った後、私は途方に暮れ、インスピレーションがなくなりそうになっていました。その痛みは非常に大きく、仕事を続けていくのが難しいと感じていました。そのような状況が続いていたのですが、その後、天国から私に贈られた新しいインスピレーションが私の前に現れ、元の道に戻るよう導かれました。私は、サッチダーナンダ師に出会ったのですが、今でもそのときの気持ちをうまく言葉で言い表すことができません。サッチダーナンダ師の愛と光は非常に強いものであったので、私は、混乱と不安の中から新たな道へと歩みだすことができました。今では、スペシャルニーズのある方々とヨガをしているときにハバータが心の中にいるのを感じています。

 

サッチダーナンダ師は、私がグル(師)に関して持っていたあらゆる幻想を打ち砕きました!私は、ヒマラヤ山脈の麓やガンジス河のほとり、あるいは洞窟の中でグルに出会うに違いないと思っていたのですが、実際には、娘がこの世を去った約3年後にブエノスアイレスの国際ヨガ会議の壇上で出会いました。私は、自分のスピリチュアル・ネームである「シバカミ」という名前を、彼とブラジルに同行していた多くの人や私の生徒たちがまわりにいるなかで、ベロオリゾンテ(Bello Horizonte)のホテルのロビーで授かりました。

 

サッチダーナンダ師がブラジルを去る日、私は空港で泣き崩れてしまいました。私が元の道に戻ったちょうどそのときに彼と離れてしまうことになるのは、とても難しいことでした。私は、泣きながら、「やっと会えたのにもう行ってしまうのですか?あなたがいなければ、どうすればよいのか分かりません」と尋ねました。彼は、私の近くに来て、「私はいつもあなたの近くにいます。あなたの心よりも近くにです。あなたから去って行くわけではないのですよ。あなたはアメリカに来なければなりません。なぜなら、あなたがここでしていることをしている人が誰もいないからです」と答えました。誰かがこれを通訳してくれました。そのとき、私はまだ英語が話せなかったんです!私はもっと激しく泣きながら答えました。「私にはお金もないし、英語も話せないのに、どうしたらそんなことができるんですか?」と。彼は、私にさらに近づいて、はっきりとこのように言いました。「お金は作りなさい。英語は学ぶのです」。私は、これ以上の絶望に耐えることができず、ただ泣いて、このように考えていました。「シバナンダ師[2]、あなたはなんてクレイジーなグルを私の元に送ったのでしょうか?彼は、ブラジルのことがまったく分かっていない!」と。私が再びサッチダーナンダ師を見上げると、彼は、私の心の中を読んだかのようにこう言いました。「では、あなたは飛行機代を集めなさい。その後は私のアシュラム(道場)に滞在しなさい」。私はそれに同意し、そこから一年も経たない間に、私はアメリカのサッチダーナンダ師の元に行きました!

 

私は、ある日、ヨガの集会があったときに、このように思ったことがあるのを覚えています。「サッチダーナンダ師があとどれぐらい彼の体とともにあるのか、私には分からないけど、一つ確かなことは、彼の側で学びたいということです」。そして、実際にはそれが13年近くも続いたんです!

 

結局、私はアメリカで市民権を取得し、そこに住むことになりました。サッチダーナンダ師が亡くなる前のことですが、私は彼に、なんだか恐ろしいと思っているという話をしたことがあります。私は、「あなたの元で学ぶために1カ月間滞在するつもりで来たのに、今ではアメリカに住んでいます。どうなっているのかしら」と言いました。私は、その頃には英語が話せるようになっていました。彼はただ笑って、こう答えました。「そうだね、私は1週間の滞在のつもりでアメリカに来たのに、まだここにいるよ」と。その頃、彼はもう35年間ほどアメリカに住んでいたと思います。

 

そうするうちに、私は、色々な場所で自分のプログラムを教えるようになったため、ヨガビル(Yogaville)[3]を離れなければならなくなりました。サッチダーナンダ師は、いつもとても協力的でしたし、私が有名になるだろうとおっしゃったこともあります。彼は、「シバカミ、毎年一度はここに来てプログラムを教えるのですよ」と言いました。私は彼に約束をし、今でもそれを守っています。

 

生徒に教えるとき、ヨガの練習法を(スペシャルニーズがあってもできるように)どのように調整しているのですか?

-- スペシャルニーズを持つ子どもにヨガを教えるとき、その子どもの障害がどの程度であるかということは、私にとって重要なことではありません。ヨガは、アーサナ(体を動かすポーズ)だけではないのです。ヨガは一人の人間のあらゆる側面に働きかけるものなので、ヨガを練習する方法はアーサナのほかにもあります。私たち一人ひとりは体を持ちますが、同時に感情と心も持っています。私たちが心と感情の調和を保つことができれば、その状態が必ず体に影響を及ぼすのです。体にはっきりとしたスペシャルニーズがない人の多くが、バランスを欠いた心と感情のために、快適さを感じられないことがあります。私たちは、呼吸法、リラクゼーション、瞑想などのテクニックによって、これらのすべての要素(体、心、感情)を一つにすることができます。私たちのメソッドでおもちゃや道具を使わない理由の一つは、ここにあります。おもちゃや道具は、生徒の意識(気づき)を内側ではなく外側に向けることがあります。サッチダーナンダ師は、かつて私にこのように言いました。「ヨガの練習をするのに必要なものは、自分の体と心だけだ」と。私は、それが完全に真実であると思いますし、いつもそこからスタートするようにしています。生徒の状況にかかわらず彼らが本当の自分自身とつながれるように、生徒を導くのは先生なのです。これが、私が理解しているヨガです。

 

練習をどのように調整しているかについては、その人の状況や能力によりますし、そうしたテクニックは自然に出てくるものなんです。私たちは、プロップス(ヨガの補助具)やおもちゃ、車椅子などは使いません。練習は、すべてヨガマットの上で行われます。いくつかのヨガの伝統的な練習法が非常に高い運動能力を必要とするのに対し、インテグラル・ヨガは、非常に穏やかでゆっくりとしたハタヨガの練習法です。

 

Yoga for the Special Childがほかのセラピーを補完するのに非常に有効である一方、私は、これがそれぞれの人の症状に対して非常に具体的な働きかけをするものであることも強調したいと思います。ですから、私は、ほかのいかなるヨガのスタイルとも混ぜ合わせないことを強く提案しています。

 

Yoga for the Special Childには、ほかのセラピーで通常設定されることが多い、その子どもへの目標や期待といったプレッシャーがありませんので、失望や不満(いら立ち)が起こることはありません。こうした感情や態度は、子どもの人生に非常にネガティブな影響を及ぼすことがあります。Yoga for the Special Childは、ただリラックスして子どもの存在を楽しむことができるプログラムなのです。

 

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ソニア・スマー(シバカミ)/ E-RYT 500, RCYT, C-IAYT

ソニア・スマー(シバカミ)は、スペシャルニーズを持つ子どもたちへのヨガ療法を用いた先駆的な取り組みにより、国際的に名が知られています。彼女の革新的なテクニックとメソッドは、40年以上にわたりスペシャルニーズを持つ子どもたちの生活を改善してきました。彼女は、ブラジルと米国シカゴにヨガ・センターを所有し、その責任者として子どもや大人への指導において大きな功績を収めました。現在は、世界各地でヨガ講師やそのほかの専門職の人々へのワークショップや指導者育成プログラムを実施しています。彼女の著書Yoga for the Special Child®は、いくつかの言語に翻訳され、出版されています。

 

出典: https://www.specialyoga.com/retreat-conference-media

          / 2018年8月6日付 Yogavilleブログより(高橋・訳)

Notes

注記:​

  1. サッチダーナンダ師が創設したヨガの流派であり、欧米におけるヨガの普及に50年以上にわたって大きな役割を果たしている。「リラックスした体」「穏やかな心」「役に立つ人生」を教えに掲げ、平和な世界の実現には、無私の奉仕と宗派を超えた相互理解が不可欠であると説いている(integralyoga.orgより)

  2. サッチダーナンダ師の師匠で、シバナンダ・ヨガの創設者

  3. アメリカ・バージニア州にあるインテグラル・ヨガのアシュラム(道場)

ヨガとは何か/ヨガがどのように役立つのか

スペシャルニーズ・ヨガ ― Yoga for the Special Child

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